コラム | 松井薫の「隠居のたわごと」vol.61
松井薫の「隠居のたわごと」vol.61
イマドキの家
地方都市に住んでいる甥が家を新築したので見に来てほしい、と言われて見に行ってきました。
広いLDKときれいな対面型のシステムキッチン、広くて使いやすそうなランドリースペース、のびのびと入れるユニットバスなど、設備面は、これが最新の家かと驚くことが多くありました。もちろん24時間換気で断熱性能も今の基準でしっかり作られています。20代で家を建てるなんて、大したもんだ、と感心しきりでした。私は家を建てることはおろか、甲斐性なしなので、今住んでいる家の修繕もままならず、だましだまし何とか死ぬまで持ちこたえてくれたら・・・、と祈るような気持ちで毎日を過ごしています。新築の家の中にしばらくいると、どうもしっくりこない感じになってきました。なんとなく息苦しい感じがするのです。窓は、採光面積を取るための最小限しかありません。窓からの熱負荷をできるだけ少なくするためもあるのでしょうが、エアコンで内部環境をコントロールしやすくしてあります。床は合板のフローリング、壁と天井はビニールクロスで覆われています。トイレには必ず窓をつけたもんですが、ここの家は窓がつけられる壁があるにもかかわらず、窓がありません。狭い密閉した空間です。どの部屋も風が通るように2方向に窓をつけて、なんていう作法はもう通用しないようです。いくら24時間換気だといっても、人間の五感で感じる風の通り道がないのは、家が呼吸していない気分になります。それと2階への階段が狭い。許されている幅ぎりぎりぐらいで、しかも直角に曲がっています。若いころ、家を設計するには、お施主さんには内緒で、棺桶が通るように考えておくもんだ、といわれたのを思い出しました。今の家はこういうハウスメーカーの家にしても、マンションにしても、そんなこと頭の隅にも思って作られていません。そして、間違いなく木で構造物が作られているのに、しっかりした安心感、というか、家というものの重量感が感じられないのです。地面にしっかり固定されているはずなのに、石の上に載っているだけの柱むきだしの町家のほうがどっしりと安定感が感じられます。日本の家はこんな方向に向かっているのでしょうか?
(2025.6.19)
