コラム | 松井薫の「隠居のたわごと」vol.70
松井薫の「隠居のたわごと」vol.70
隠居のたわごと
- 2026/03/23 -
共振する家
鉱石ラジオというのをご存じだろうか。簡単な仕組みで「電源なし」でラジオが聞ける!うそのようなラジオだ。仕組みはこうだ。空中に放り出した電線で電波を受ける。それをエナメル線をぐるぐる巻いたコイルと、可変コンデンサー(バリアブルコンデサー)に通すと、共振作用で、ある周波数の電流だけが大きく取り出される。それを整流作用のある方鉛鉱や黄鉄鉱などに通してやると、イヤホンでラジオが聞こえるのだ。小学生の時にこれを初めて組み立てて、本当にラジオが聞こえてきたとき、狂喜乱舞した。(現在も組み立てキットが市販されている)。これは本物の大人の世界だ!
木と土と紙でできている伝統的な家は、長く使われている間に、そこに住む人の発する周波数に共振し、強められた喜びや悲しみは、記憶として家の壁や柱に残っている。さらにそれらが家固有の周波数となって、新たに家に足を踏み入れた人にも共振作用を起こして、何かしら感じさせ、遠くを見るような目にさせる。さらにある種の石に整流作用があるわけで、土でできた土間と壁、土を塗り固めて作ったおくどさんで構成される炊事の場所は、外部から入り込んでくる雑多なものを、整流作用で浄化し、清められた空気を作る。その場所で、食材を流れる水で洗い、形を整えて(調理という字は、自然の理屈通り調えると書かれている)我々の口に入り、日々の生活をするエネルギーとなる。鉱石ラジオは、共振作用と整流作用を使って、飛び交っている雑多な情報から、一つだけを選び出し、耳元に届けてくれる。伝統的なつくりの家も、外部の雑多な情報から自分たちの住んでいる家に共振する情報だけを選び取り、我々が消化吸収して成長することのできる形にしてくれる装置なのかもしれない。
(2026.3.19)
