コラム | 「なぜ京都人は京町家に惹かれるのか」

「なぜ京都人は京町家に惹かれるのか」

お話
執筆者: 51Action

京町家という(ドライな言い方をすると)ずいぶんと古くなってしまった建物が、

なぜ人気なのかを考えてみると、それが京都人の価値観と結びついているからではないかと思うようになりました。

 

私は大学まで京都に住んでおり、その後10余年東京で働き、32歳になって地元の京都に戻り独立してこの仕事を始めています。

なので、いわゆる「仕事」をしたのは東京でしかなく、京都で仕事をしたのは、つい数年前にUターンで戻ってきてからです。

 

東京では渋谷のlT企業に勤めていたこともあり、目まぐるしく移り変わるビジネスの潮目を先読みしながら、

先は先へ、速く速く、というスピードを常に意識して働いていました。

それは、会社単位の話ではなく、街全体がそのような感じです。

 

しかし、京都に戻ってくると、あれ、何かそこで学んだリズム感がフィットしないな、とすぐに感じるようになりました。

 

しばらくして気づいたことは、「この街の最優先はスピードではない」ことでした。

 

では何かというと、言い過ぎかもしれませんが、「凛としてゆっくり落ち着いていること」なのかもしれません。

バタバタせず、ゆったりと過ごすこと。

新しいものよりも普遍的なものを愛すこと。

府外から進出してきた新しいお店に行かず、老舗のお店に通うこと。(正確に言うと、歳を重ねるほどにそうなっていく傾向があるのでは、と。)

何百年と繰り返されてきた行事ごとを続けること。

夏暑くても川床で涼をとり、冬寒くても火鉢を眺め、「四季を楽しむこと」と頭を変換できること。

それが京都らしさであり、京都人なのかもしれません。

その心持ちと、京町家という存在が、とても近いのではないかと思うのです。

私は今37歳ですが、今挙げたような生活が嬉しくなってくる年頃です。

 

多くの人が京町家に興味が湧くのも、新しく効率的に量産されたもの達よりも1点1点味わい深いものを愛でる気持ちに近いのではないでしょうか。

よくする話ですが、柱に刻まれた見知らぬ人の背比べの傷を、味わいと採るか、気持ち悪いと採るか、その違いかなと。

 

当たり前なことですが、築100年の家は、100年の年月が作り上げたもの。

他の地域よりも空襲の被害が少なかったことが幸いし、

先人の営みのその真上で生活をしている京都人は、

京町家に住む、その醍醐味を理解しているのかもしれません。

 

京都R不動産

水口貴之

 

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