コラム | 京町家のリノベーションと景観の再生保全
京町家のリノベーションと景観の再生保全
お話
- 2022/06/21 -
昨年、一軒の小さな京町家をリノベーションしました。
長期間空き家になっていたこともあり、建物一面にツタが絡まり、外壁に貼られたトタンは著しく劣化、屋根も老朽化し、まさに廃墟のような佇まいでした。そのため、躯体を補強しながら全面リノベーションを実施しました。ツタを取り払い、トタンは全て撤去し、屋根も全面葺き替えを行いました。また増築により坪庭が失われ、自然光が入らず閉塞感があったため、一部減築して坪庭を再生。外観は手が加えられていたため、建築当時の意匠を推測し、できる限り再現しました。
リノベーションの完了後、内覧のために遠方から来られ、この町家の傍のホテルに滞在されていたお客様。内覧時に「ホテルのロビーの窓からこの町家がよく見えるんです。それがすごく綺麗で。」と話されていたのがとても印象的でした。
京町家のリノベーション後に、ご近所にお住まいの方から「家が綺麗になって町並みが良くなった」と声をかけていただくことは多いのですが、一軒の小さな京町家の再生が、意外な場所からの眺望にも寄与していたと知りました。ささやかながら、京都の景観の再生保全に貢献できていることを嬉しく思ったのを覚えています。
