コラム | 松井薫の「隠居のたわごと」vol.73

松井薫の「隠居のたわごと」vol.73

隠居のたわごと

弱いは強い

この5月22日に千年家で知られている「箱木家住宅主屋」(神戸市北区山田町)と「旧古井家住宅」(姫路市安富町)が国宝に内定した。どちらも室町時代に作られたもので、屋根はかやぶき、手斧で削ったような木を組み合わせて土壁を塗った家だ。草と木と土でできている住宅が、現存しており、箱木家では50年前までは人がそこに住んでいた。日本の古民家は、わらぶきやかやぶきの屋根と木の構造物に土壁という組み合わせで作られている。草や木などは、すぐに腐る材料だが、それらの組み合わせや使い方が、長い歴史の中で自然に逆らわず、理にかなった使い方になっており、その上、腐りやすい材料なので、何度も手入れをしていくことで、非常に長い期間、住宅として使われている。日本家屋に中に使われる畳も、わらといぐさという草の組み合わせで、すぐに腐ってしまう材料同士だが、わらを重ねて締め付け、その上に藺草を編んでカバーすることで、長い期間、いい状態を保持することができる。時々は畳裏も風をあてて乾燥させるようにすると、さらに長持ちする。

一方、腐らないし、強度も強いコンクリートや防腐処理をした積層材の木を使った現代の住宅は、40~50年もすると、老朽化して建て替えることになる。なんという皮肉。一方では弱く、腐りやすいもの同士をうまく組み立てることで寿命の長い構成材料にし、しかもたびたび手入れをすることで長い寿命を保っているのに、単一で強い材料で作った住宅は、手入れもされない(できない)こともあり、すぐに寿命がきてしまう。この違いがどこから来るのかといえば、いくつもの材料をうまく組み合わせて良さを引き出し、常に意識して手入れをしているかどうか、だろう。町家も全く同じで、草や木や紙や土の組み合わせだが、人に対して自然な環境を保持しながら100年、200年と使い続けることができる。

(2026.6.19)