コラム | 名も無き京町家達

名も無き京町家達

お話

京町家といっても、大きさ、立地、状態、変更されてきた履歴や内容など千差万別です。TV番組やネットなどに出てくる、見学会ができる市の指定文化財のような京町家のイメージを強く一般の方はお持ちだと感じます。また、私たち不動産業者も取引実績を聞かれると、できるだけ立派な京町家の実績をアピールしたくなる(笑)ため、それに近い京町家の取引事例を出してしまします。しかし、実際の実務で、売買や賃貸の取引をさせていただく中では、外観が全面変わり、建具がアルミサッシに変わり、通り庭は床組みされ、火袋は塞がれ、和室は洋室に変更された、“名も無き京町家”を沢山、取り扱わせていただきます。それらの京町家というのは、80年以上の間、人の生活様式や気候の変化に合わせて改造されてきたもので、決して悪い事をされてきた訳ではありません。京町家というのは単に建物の様式でなく、人々の生活の歴史や想いが詰まっているもの。また、改造をされたという事は、いつでも元にも戻せるという事です。現、所有者様のお好きなように、80年以上前の様式や施工方法にこだわっても良し、京町家の様式は守りながら現代的にされても良し、いづれにしても、躯体と屋根はしっかり維持していただき、次の所有者へ継承して頂ければそれで良いと思います。文化財としてのごく一部の立派な京町家だけでなく、“名も無き京町家”にも同じように価値が有り、残していく事が大切で、残す事はより難しいと思います。私たち、地場の不動産業者の役割は大きいと思います。(京町家情報センター 足立磨砂幸)