コラム | 松井薫の「隠居のたわごと」vol.42

松井薫の「隠居のたわごと」vol.42

隠居のたわごと

町家が夏に負けた

 今年の夏は、暑い。猛暑日が何日も続き、39℃にもなろうかという日が3日も続いた。

今までの夏だと、うっすら汗をかきながら風を通して涼しさを感じて夏を乗り切っていた。町家を改修するときも、エアコンは「緊急避難」的につけておきましょうか、といった感じだった。でも今年は違う。町家の夏にはエアコンが必需品だ。(やっとわかったのか?よく生きていたな、といわれそうだが)以前の夏と同じように過ごそうとしていたのに、ある日、朝、目が覚めるとどうも調子が悪い。体が思うように動かないのだ。何もやる気がしない。ひょっとしたら眠っている間に軽い熱中症になったかも?という具合だった。とうとう部屋にエアコンを設置し、昼間はエアコンをつけて過ごすようになった。ついに町家が夏の暑さに負けてしまった。今年の夏は負けを認めざるを得ない。

 どうしてこんなに暑いのだろうか。周りのみんながエアコンをつけて外に熱気を放出しているからなのか。それともそんなローカルな話ではなくて、太陽の活動に少しだけ変化があって、それが大気を熱くしているのだろうか。いずれにしろ、町家は周りの自然と調和を保ちながら、穏やかに生活を営むことをしているわけで、エネルギーでも電気でも、使えるものは無批判にばんばん使って、自分とその周りだけは快適になればいい、という生活態度とはどうしても相いれない。しかしエアコンが必需品だとわかった以上、それならば、断熱性能をあげてエアコンの使用を少なくしようということも考える必要がある。今までは土壁の土や木造の木や障子に張る紙や、空気の層などの町家を構成する要素の断熱性能に寄りかかっていたが、それにプラスして断熱材をいれる、しかも町家のよさである構造材の柱や梁が見えて、土壁の環境をよくする性能を生かして、外部が取り入れることのできる穏やかな気候の時には外部とつながって、周りの自然を感じられる、そんな新しい町家にふさわしい断熱の仕方を考えないといけなくなってきた。といっても、すぐにはそんないいものを思いつかないので、とりあえずエアコンを設置して、どうもなじめない涼しい風に吹かれながら日中を過ごし、眠るときは北に面した部屋に移動して、網戸の窓を開けて夜の放射冷却を取り込みながら、冷蔵庫で冷やした保冷剤(冷蔵庫はエアコンで冷やす容積の1/1000ぐらいなので、まだ罪の意識が軽い)を枕に(もちろんエアコンなしで)眠っている。

(2023.8.24)