コラム | 松井薫の「隠居のたわごと」vol.52
松井薫の「隠居のたわごと」vol.52
真夏に町家で安眠する
連日ひどい暑さで、テレビでもエアコンをつけた部屋にこもるように連呼しています。でもエアコンで内部が冷える分、熱交換をしているので外部は暑さが増すことになります。電気も使えば使うだけ、発電時に発熱し、電線を経由して運ばれてくるときに熱になってエネルギーが逃げるので周りの温度を上げることになります。そしてますますエアコンがないと生きていけない世界になってきました。
こんな状態の時に、隙間だらけでエアコンの効きの悪い町家で、しかもエアコンを使わずに夜、ぐっすり眠るなんてことができるのでしょうか。できます!!鍵は「通風」と「放射冷却」です。建物の各部屋の温度を見てみると、1階と2階で温度は2~3℃違いますし、日射の強い部屋と、陰になっている部屋でも当然温度は違います。そこで、夏は眠る場所を移動することを考えるだけで、ずいぶん眠るときの環境が違ってきます。当然、1階の北側の(日中も影になっている時間が長い)部屋は断然涼しいわけです。今はベッドで眠る人が多くて、簡単に眠る場所を移動しにくいですが、昔ながらの敷布団+掛け布団方式ですと簡単に場所を移動できます。そして北側の窓を開けて(網戸は必要)いると、特に雲の少ない北の空は、どんどんと地面や建物にたまった熱気を逃がしてくれます。そうしてできた涼風が開け放った窓から部屋の中にも入ってきます。また部屋の中の人間の体から出る赤外線も大気に放出され、涼しくなります。こうして、1階の北側の(それも庭に面していればベスト。北側に公園などがあっても涼しい。)部屋であれば、2階の部屋よりは5~6℃は低くなります。2階の部屋が32℃あっても、1階の北側の部屋は27℃程度。これでぐっすり眠れる、というわけです。私も夏の暑い時期は、ずっとこの方式でエアコンナシで(アイスノンは使います)過ごしています。とはいうものの、今年の異常な暑さの中では、少々無理があり、2階の温度計が38℃を指している日などは、1階の奥に1台だけあるエアコンをタイマーでつけて、途中に扇風機を置いてエアコンの冷たい風を調節しながらいただいておりますが・・・。
(2024.8.19)